月刊人事スクエア2008年10月号

転勤・出向について  −労務管理上の注意点−

労働者に転勤や出向を命じることは、経営上当然に会社が有する権利であると考えられることが少なくありません。しかし転勤や出向等の人事異動は労働条件の不利益変更を伴うことも多く、その実施には注意を要します。

◆勤務地を限定して採用された場合の転勤

勤務地が特定されている労働者に転勤を命ずるには、一方的な業務命令は出来ず、その都度労働者の同意が必要とされます。勤務地限定の明示がなく就業規則に転勤条項が規定されているなどの状況があれば、使用者は転勤命令権を有するといえます。

◆転勤命令が権利の濫用にあたる場合

転勤を命じられた労働者の生活上の不利益と、転勤命令の業務上の必要性(異動の必要性と人選の合理性)を総合的にみて権利の濫用に当たるかが判断されます。扶養家族の病状等の事情により転勤による不利益が通常甘受すべき程度を著しく超えるときは転勤命令が無効とされることがあります。

◆適法な出向と偽装出向

在籍出向は通常よく行われていますが、

  • 労働者を離職させず関係会社で雇用機会を確保するため
  • 経営指導・技術指導の実施?職業能力開発の一環として行うもの
  • 企業グループ内の人事交流の一環として行うもの

などの目的を有していないと、出向の形態を偽装した労働者供給事業に該当し、職業安定法違反となるおそれがあります。

◆出向命令と労働者の同意

会社が労働者に出向を命じるためには原則として労働者の同意が必要になります。就業規則で出向に関する規程があればただちに包括的に同意があったものと認められるわけではなく、出向の諸条件について明確に定め、会社が出向を命じた場合は労働者はこれに応じなければならない旨も規定しておく必要があります。また、出向によって労働条件が低下する場合には個別同意が必要となります。

全国健康保険協会の設立  −社会保険庁解体後の業務の行方−

今の年金問題等々を発端に社会保険庁解体が取り沙汰されていますが、本年10月からその第一段とも言うべき「全国健康保険協会」が発足します。また、平成22年には「日本年金機構」が発足し、社会保険庁で行っていた業務はこの二つの組織に移行されることになります。これらの法人の職員は、いずれも公務員ではなく民間です。

主に中小企業が加入している政府管掌健康保険(政管健保)が新たな健康保険の保険者である全国健康保険協会(協会けんぽ)に替わりますが、これまでと異なる点が多々あります。

・都道府県ごとに設置され、都道府県ごとに保険料率を決定する
 (都道府県によって保険料の高低の差が出る)

・協会けんぽの窓口では出産育児一時金・傷病手当金等の給付申請や、任意継続被保険者の手続き等を 行い、資格の取得や喪失(入社・退社時等)の手続きはこれまで通り社会保険事務所で行う(被保険 者証の発行は協会けんぽで行う)

・被保険者証が10月以降順次新しいものに切り替えられる

他にも、実際に手続きをする場合には9月までとは異なる点が出てくることが予想されますので、ご注意下さい。ただし、健康保険の運営主体が変更になるということで、保険給付の内容や、被扶養者の基準等に変更はありません。

ご不明な点はお近くの社会保険事務所・協会けんぽ、または社会保険労務士にお問い合わせください。

《声》

人の境遇には、年齢や経験年数などによって人の上に立つ時期と人の後に従う時期があります。これを間違うと人間的な成長が止まったり、穏やかな人間関係が阻害されたりするのではないでしょうか。

A社員は、入社時から仕事熱心で何でも率先して取組むような性格でした。しかし、一年後には上司や同僚から阻害されるようになり、A社員は退職しました。原因は、自分より知識や営業成績が低いと判断すると、上司の指示に逆らったり、同僚に命令口調になったりしたからです。人の後に従う期間が短すぎたのです。

易の卦「坤(こん)」の中に、「先んずれば迷いて道を失い、後るれば順いて常を得」とあります。人の成長期は、上に立つ者の指示に従順な気持ちで従うことを心掛ければ、迷うことなく安定して進めるものなのです。