月刊人事スクエア2008年9月号

労働契約法 −改正施行のポイント解説−

◆労働契約法制定の意義

現在の我国では、一口に労働者といっても、雇用形態は、正社員、パートアルバイト社員、
契約社員、派遣社員等々と多様化し、それとともに企業とそこで働く労働者との間で個別
労働紛争が増加しています。
  
しかし、労働基準法はあるものの、これは最低労働条件を規定したものであり、個別労働
紛争を解決するためのルールは、民法とそれぞれの事案に類似した判例によって判断する
しかありませんでした。しかし、労働者や使用者の多くにとって、民法あるいは判例は身
近なものとは言えず、したがって、問題が生じたときにそれらから解決の方法を探ること
には困難が伴いました。

そこで労働契約法を制定し、労働契約における権利義務関係を確定させる法的根拠を示し、
労働契約に関する民事的なルールを明らかすることになりました。

◆労働基準法との比較

労基法は、強行法規ですので、行政指導、罰則などがありますが、労働契約法は、民事的
なルールを定めたもので、企業にとっては、労働契約法違反に照らした監督官による指導
や勧告の対象となることはなく、罰則もありません。また、是正勧告に従わない場合の企
業名公表のようなこともありません。行政側としては労働契約法を周知して、労使関係の
安定に資することに留まります。
しかし、この法律が、トラブルの未然防止や解決のためのルールであることは確かです。

ただし、個別労働関係紛争が起こったときには、紛争調整委員会等においては、労働契約
法に沿った助言・指導、あるいは、あっせん案が示されます。

◆労働契約法制定の真の目的

当初国会に提出された原案では、「労働契約と就業規則との関係等を定める」ことが労働
契約法の目的として明記されていましたが、与野党協議の結果、この文言が削られました。
しかし、労働契約法は労働契約と就業規則の関係の明確化を図っている、ということが定
説になっています。

◆労働契約法のポイント

上記のような理由で、この法律のポイントは7条(労働契約と就業規則の関係)8条(労働
契約の内容の変更)9条・10条(就業規則による労働契約の内容の変更)だと思われます。

これまでは、「就業規則の有効性は、周知を欠いても罰則の問題が生じるだけで有効性には
影響がない」とした判例がある一方で、「就業規則が効力を発揮するためには、労働者の意
見を聴き、かつその意見書を添付して行政官庁に届出ることが必要」とした判例もあり、裁
判所でも見解が分かれていました。 

しかし、7条で就業規則が労働契約の内容となるための要件として「使用者が合理的な労働条
件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業
規則で定める労働条件によるものとする。」と明記されました。

また、8〜10条で、労働契約の変更は、労使の「合意」によるものとし、就業規則の変更によって
は不利益変更できないことを原則にしたうえで、就業規則の変更が合理的である場合には、就業規
則による労働条件変更も可能としました。

以上のポイントを踏まえ、就業規則の作成・変更をしなくてはなりません。

《声》

「恩は他人に着せるものではない。自分が着るものである」と言われるが、まさに人間心理の
神髄だと思います。

事業や人生に成功している多くの人の信条に、「成功の秘訣は感謝の心を忘れないこと」こ
れも他人に受容される当然の原理かもしれません。

Aさんという経営者は、新しいアイデアを出し次々に事業を起こしています。ところが、五年
くらいのサイクルで事業を起こしては失敗を繰り返しています。「遣り手で面倒見も良いが、
他人に恩を着せて成果を独り占めにするから困る」と言うのが仲間からの言い分です。

Aさんは、「感謝される人になる」が信条です。他人から受けた親切に感謝する心は尊いので
すが、自分が与えた親切に対して感謝することを他人に強いることは、他人に受容されないも
のです。恩は自分が着てこそ尊いのです。